2023年10月8日
コロナ禍の影響で、ここ数年はインフルエンザの流行は見受けられませんでしたが、今年は昨年までとは状況が異なります。通常、インフルエンザの流行は冬とされていますが、今年は7月頃から罹患者が出現し、その数は徐々に増加しています。
現在、インフルエンザの予防策として最も有用とされるのがインフルエンザワクチンです。ワクチンは、インフルエンザ感染を予防するだけでなく、もし感染しても症状を軽減する効果があります。
当院でも例年は11月からインフルエンザワクチン接種を開始していましたが、今年は10月16日から開始します。
今回はインフルエンザワクチンの接種時期について文献を検討してみました。アメリカ予防接種委員会(ACIP)によるとインフルエンザ流行のタイミングを予測することは難しく、最適な接種開始時期は毎年異なるとされます。とくにシーズンを通じてのワクチンの効果減弱の可能性、流行状況、ワクチン流通のタイミングのバランスで考える必要があるとされます。
ワクチンの効果減弱の可能性については最近の報告では
・インフルエンザA(H3N2)、A(H1N1)pdm09、B/Yamagata関連の入院の予防において、接種直後が最も効果的で、その後、月ごとに8%-9%の効果が低下する傾向を認めた。
Clin Infect Dis. 2021;73:726-729.
・65歳以上の高齢者を対象にした2018/2019年のインフルエンザワクチンの有効性は、全体で約46%、A(H3N2)に対して45%、A(H1N1)pdm09に対しては41%であった。しかし、接種後の有効性は徐々に低下する傾向が観察された。
Int J Environ Res Public Health. 2021;18:1129.
・インフルエンザワクチン接種後、0-180日は54%から67%の予防効果を認めたが、181-365日では効果は低下する。
Vaccine. 2016 Jul 19;34(33):3907-12.
上記の報告がなされています。
これらからはワクチンを早く接種すると、シーズンの後半に効果が低下する可能性が示唆されています。一方で、接種のタイミングを遅らせると、インフルエンザの流行に間に合わないリスクも考慮しなければなりません。具体的なタイミングとして、アメリカの予防接種委員会(ACIP)は10月中にワクチン接種を受けることを推奨しています。接種から一定の期間が経過すると、ワクチンの効果が徐々に低下する可能性があるため、8、9月ではなく、この時期の接種がワクチンの効果を最大化しやすいと考えられます。
当院では、10月16日よりインフルエンザのワクチン接種を開始します。接種を希望される方は、webでのご予約をお願いします。64歳以下の方は、web問診もご利用いただけると大変助かります。一方、65歳以上の方には、各市町村からの問診票をご記入いただきます。皆様の健康を守るため、適切なタイミングでのワクチン接種を心がけましょう。
<参考文献>
Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2023–24 Influenza Season
Recommendations and Reports / August 25, 2023 / 72(2);1–25